放射性壊変について(その1)


今回は下式について解説していきます。
$$N_t=N_0 e^{-\lambda t}=N_0 \left(\frac{1}{2}\right)^{\frac{t}{T}}$$
\(N_t \colon 時刻t[s]における原子数\)
\(N_0 \colon 時刻0[s]における原子数\)
\(T \colon 半減期[s]\)
\( \lambda \colon 壊変定数[s^{-1}]\)
※単位のsは秒のこと

上記の式を暗記しているだけで、導出方法については知らないという方がいましたら、本項を読んでいただければと思います。多くの場合は上式の暗記で事足りますが、第一種放射線取扱主任者 平成30年 物化生 問3-1のように、式の導出について問う問題もありますので、理解しておいた方が無難です。
ただ、放射性壊変について本気で理解しようと思ったらポテンシャルが~、ガウス分布が~、、、とキリがありませんので、今回は式の導出のみに主眼を置いて解説します。また、物理学史と同じ流れで導出しているとは限りませんので、ご了承いただければと思います。

唐突ですがここで問題。
\(\frac{1}{6}\)の確率で1の目が出るサイコロを600個転がした場合、1の目が出る個数の期待値はいくつでしょうか。
\(600\times\frac{1}{6}=100個\)となりますね。

面倒なので、今後「期待値」という言葉は省略します。期待値とは何か分からない方は気にしなくても大丈夫です。

それでは次は、
\(\frac{1}{6}\)の確率で1の目が出るサイコロを6000個転がした場合、1の目が出る個数はいくつでしょうか。
\(6000\times\frac{1}{6}=1000個\)となります。

当たり前かも知れませんが、サイコロの数が10倍になると1の目が出るサイコロ数も10倍になり、サイコロ数に比例することが分かります。

同じように考えて、壊変する確率が\(\frac{1}{6}\)の原子が\(N_t個\)あった場合、壊変する原子数は\(N_t \times \frac{1}{6}=\frac{1}{6} N_t個\)ですね。
(上記表現は正確とはいえませんが、ざっくりこんな感じと思ってください)

\(N_t\)が10倍になれば壊変数\(\frac{1}{6} N_t\)の値も10倍になり、壊変数は原子数\(N_t\)に比例することが分かります。

以上より壊変数は原子数に比例することが分かりました。
それでは次のことについて考えてみてください。

はじめに(時刻t=0の時点)、1秒間に崩壊するする確率\(k\)の原子が\(N_0\)個であった場合、その後常に1秒間に\(k\times N_0\)個のペースで壊変し続けるでしょうか。

答えは否です。
ここで問題になるのは、原子数は壊変に伴って減り続けるということです。

最初の時点では原子数が\(N_0\)ですので、その瞬間は1秒間に\(k\times N_0\)のペースで壊変します。しかし壊変によって原子数が減って\(\frac{1}{2}N_0\)個になった場合、その瞬間は1秒間に\(k\times \frac{1}{2}N_0\)個のペースで減り続けます。
このように、壊変するペースは常に一定ではなく、その瞬間に存在する原子数に依存します。

壊変するペースについて計算したくても、壊変するにつれてそのペースがどんどん変わっていくので、とても考えづらいですね。
そこで登場するのが微分の考え方です。

ここで仮に原子の壊変のペースが一定だとしましょう。
この場合、どの時刻においても同じように原子が減少していきますので、時間経過に伴う原子数の変化は図1のようになります。

図1

壊変のペースが一定である場合、傾きが一定の直線で原子数の変化を表すことができます。
しかし実際は、原子数が減少していくので、それに伴って減少のしかたも小さくなっていきます。この様子をグラフで表すと図2のようになります。

図2

図2のような曲線だと、時間がたつにつれて減少のペースも変わってしまうので、とても考えづらいですが、図1のような直線の場合は比較的イメージしやすいと思います。
それでは図2を直線として考える方法があれば便利だと思いませんか?

ここで図3のように時刻tのときの原子数\(N_t\)と、それからΔt秒後の時刻t+Δtのときの原子数\(N_{t+\Delta t}\)について考えます。

図3

上図では点Aと点Bを結んだ直線(紫)は、曲線部分とは明らかに形が違います。しかし、図4のように点Aに点Bを近づけていくとどうでしょう。

図4

図4を見ると、点Aに点Bを近づけると直線ABは緑線のようになり、オレンジの曲線に近い形になりました。
更にΔtを小さくして点Aに点Bを近づけていき、点Aと点Bを限りなく近づけた場合を考えます。この場合、直線ABとオレンジのの曲線部分はほぼ同じ形と考えることができ、かつ直線ABの傾きはほぼ点Aにおける接線の傾きと同じになります。
ここでいう点Aにおける接線の傾きとは、点Aにおける壊変のペースを意味します。
つまり非常に小さい区間で考えることで、AB間の壊変のペースを全て点Aでの壊変のペースで考えることができるのです。

そしてABの区間を様々に変えていくことで、曲線全体を非常に細かい直線の集まりと捉えることができます。

点Aを点Bに限りなく近づけることは、時間Δtを限りなく小さくすることに対応します。このΔtを非常に小さくした微小時間をdtとします。また時間dtの間の原子数\(N_t\)の変化を\(dN_t\)とおきます。

すると、点Aと点Bを限りなく近づけたときの、直線ABの傾きは\(\frac{dN_t}{dt}\)となります。
そして先ほども述べたように、直線ABの傾きは点Aの接線の傾きと同じと考えることができます。点Aの接線の傾きとは時刻tにおける壊変のペースのことで、これは先ほど考えたように、時刻tにおける原子数\(N_t\)と壊変する確率kによって決まります。
原子数は減少していきますので、傾きがマイナスになることを考慮すると、下式が成立します。
$$\frac{dN_t}{dt}=-kN_t$$

便宜的に壊変する確率をkとおきましたが、1つの原子が1秒当たりに壊変する確率を壊変定数\(\lambda\)と定義すると、下式が成立します。
$$\frac{dN_t}{dt}=-\lambda N_t$$

本日はここまでです。
次回は上式を計算していきます。

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