第66回午後53医用工学その2(診療放射線技師)


前回記事では交流電圧による実効値と消費電力の式について確認しました。
本項では公式に頼らない求め方について解説していきます。

まず交流の実効値について説明します。
直流電圧\(E[V]\)による消費電力と、ある交流電圧による平均の消費電力が同じであるとき、その交流電圧の実効値は\(V_e=E[V]\)となります。

抵抗に交流電圧をかけると、電圧も電流も時々刻々と変化するので、消費電力も一定ではありません。
交流の消費電力の平均値から、直流の電圧・電流に換算したものが実効値です。

まずは下記の波形から消費電力の平均値を求めていきましょう。

まず、電圧、電流ともに正弦波であり、電流は位相が\(\frac{\pi}{3}\)進んでいるから、
$$v=15sin\omega t\\i=10sin\left(\omega t-\frac{\pi}{3}\right)$$

よって1周期分の電力の平均値\(P\)は、1周期(=T)分だけ積分した後にTで割ることで、次のように表されます。
$$P=\frac{1}{T}\int_{0}^{T} vi dt\\=\frac{1}{T}\int_{0}^{T} 15sin\omega t \times 10sin\left(\omega t-\frac{\pi}{3}\right) dt\\=\frac{\omega}{2\pi}\times 150 \int_{0}^{T} sin\omega t \times sin\left(\omega t-\frac{\pi}{3}\right) dt$$

\(\theta=\omega t\)とおくと、
\(t |0\rightarrow T\)のとき、
\(\theta|0\rightarrow 2\pi\)

そして、\(\frac{d\theta}{dt}=\omega\)より、
\(dt=\frac{1}{\omega}d\theta\)

よって、
$$P=\frac{\omega}{2\pi}\times 150 \int_{0}^{2\pi} sin\theta \times sin\left(\theta-\frac{\pi}{3}\right) \frac{1}{\omega} d\theta\\=\frac{75}{\pi} \int_{0}^{2\pi} sin\theta \times sin\left(\theta-\frac{\pi}{3}\right) d\theta$$

\(x=\theta-\frac{\pi}{6}\)とおくと、

\(\theta |0\rightarrow2\pi\)のとき、
\(x|-\frac{\pi}{6}\rightarrow\frac{11\pi}{6}\)

\(\frac{dx}{d\theta}=1\)より\(dx=d\theta\)

よって、
$$P= \frac{75}{\pi}\int_{-\frac{\pi}{6}}^{\frac{11\pi}{6}} sin\left(x+\frac{\pi}{6}\right) \times sin\left(x-\frac{\pi}{6}\right) dx$$

ここで和積の公式
$$cosA-cosB=-2sin\frac{A+B}{2}sin\frac{A-B}{2}$$
より、
$$sin\left(x+\frac{\pi}{6}\right) \times sin\left(x-\frac{\pi}{6}\right)\\=sin\left(\frac{2x+\frac{\pi}{3}}{2}\right) \times sin\left(\frac{2x-\frac{\pi}{3}}{2}\right)\\=-\frac{1}{2}\left(cos2x-cos\frac{\pi}{3}\right)\\=-\frac{1}{2}cos2x+\frac{1}{4}$$

したがって、
$$P=\frac{75}{\pi}\int_{-\frac{\pi}{6}}^{\frac{11\pi}{6}} sin\left(x+\frac{\pi}{6}\right) \times sin\left(x-\frac{\pi}{6}\right) dx\\=\frac{75}{\pi}\int_{-\frac{\pi}{6}}^{\frac{11\pi}{6}}\left(-\frac{1}{2}cos2x+\frac{1}{4}\right)dx$$
正弦波を1周期分積分すると0になるから、
$$P=\frac{75}{\pi} \int_{-\frac{\pi}{6}}^{\frac{11\pi}{6}}\left(\frac{1}{4}\right)dx\\= \frac{75}{\pi}\times \frac{1}{4}\int_{-\frac{\pi}{6}}^{\frac{11\pi}{6}}dx =\frac{75}{\pi}\times\frac{1}{4}\times 2\pi=\frac{75}{2}=37.5$$

このように、前回記事と同じ値が算出されました。
試験中にこのような積分計算をするのは厳しいという方も多いと思います。
しかし、実効値の根底にはこのような計算がある、ということは覚えておいてください。
この計算方法を覚えておくことで、単純な正弦波交流以外が出題された場合でも解くことができ、国試対策に留まらない知識を身につけることができます。

ちなみに、筆者は式を見て真っ先に和積の公式を思いついたのですが、もっと簡単な積分方法はあるのでしょうか。
他には\(x=\theta-\frac{\pi}{6}\)と置換せずに、\(sin\left(\theta-\frac{\pi}{3}\right)\)を加法定理で分解して、2倍角の式でも計算できたかなと思います。
もし詳しい方がいましたら筆者のTwitterにご連絡いただけませんか。

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