平成25年 物化生 問3-I【放射線取扱主任者】

早速解説に入りますが、早々に式の羅列がありますので、拒否反応がある方は読み飛ばしてもそこまで問題無いです。

$H_2S$は弱酸で以下のように2段階で電離をします。
$H_2S\rightleftharpoons H^+ +HS^-$
電離定数$K_1=\frac{\left[H^+\right]\left[HS^-\right]}{\left[H_2S\right]}$

$HS^-\rightleftharpoons H^+ +S^{2-}$
電離定数$K_2=\frac{\left[H^+\right]\left[S^{2-}\right]}{\left[HS^-\right]}$

よって、
$H_2S\rightleftharpoons 2H^+ +S^{2-}$
この反応の電離定数は、
$K=\frac{\left[H^+\right]^2\left[S^{2-}\right]}{\left[H_2S\right]}\\=\frac{\left[H^+\right]^2\left[S^{2-}\right]}{\left[H_2S\right]}\times\frac{\left[HS^-\right]}{\left[HS^-\right]}\\=\frac{\left[H^+\right]\left[HS^-\right]}{\left[H_2S\right]}\times\frac{\left[H^+\right]\left[S^{2-}\right]}{\left[HS^-\right]}=K_1K_2$
$\left[S^{2-}\right]=\frac{K\left[H_2S\right]}{\left[H^+\right]^2}$

上式より硫化水素が飽和しているときのモル濃度が一定とすると、$\left[S^{2-}\right]$は$\left[H^+\right]$の2乗に反比例します。
よって、$\left[H^+\right]$が小さくなる、すなわちpHが大きくなると$\left[S^{2-}\right]$は増加します。

以上より(A)は「2、弱酸」、(B)は「5、大きく」です。

今回、色々と式をこねくり回しましたが、主任者試験の範囲であれば、
「硫酸、塩酸、硝酸以外は弱酸」
「$\left[H^+\right]$が小さい(=pHが大きい)ほど$\left[S^{2-}\right]$が大きい」
くらいの認識で問題無いと思います。

それでは次いきます。
$\left[S^{2-}\right]$が問題文中で指定されてますので、それを使用します。
$\frac{K_{sp\left(CuS\right)}}{\left[S^{2-}\right]}=\frac{6.5\times10^{-30}}{7.6\times10^{-23}}=\frac{65}{7.6}\times10^{-8}$
(C)の選択肢では桁が分かればいいので、割り算しなくても「2、$10^{-8}$」と求まります。
基本的に同位体どうしで化学的性質は同じなので、$^{64}Cu^{2+}$だけ沈殿するというようなことはありません。
(D)は「2、沈殿しない」です。

次に$\left[Zn^{2+}\right]$と$\left[S^{2-}\right]$です。
与えられた数値をそのまま使います。
$\left[Zn^{2+}\right]\left[S^{2-}\right]=1.0\times10^{-3}\times7.6\times10^{-23}=7.6\times10^{-26}$
よって(E)は「2、10^{-26}」です。

ちなみに、今回の問題ではあまり意識しなくても解けるのですが、結構大事な話を省略しています。
(C)で溶解度積を用いてイオン濃度を求めていますが、これができるのは硫化銅(II)の沈殿が生じているからです。
溶解度積は飽和水溶液における値ですので、沈殿が生じていない(=飽和していない)場合は溶解度積からイオン濃度を求めることはできません。
ZnSの沈殿は生じていないので、$[Zn^{2+}]$濃度の計算に溶解度積を用いたら間違いです。

次は金属イオンの沈殿分離に関する問題です。
まず、酸性条件下で硫化物沈殿を生じるものとして代表的なのが$CuS$です。
煮沸して$H_2S$を追い出した後にアンモニア水を加えると$Al\left(OH\right)_3$が生じます。
そして次に塩基性条件下で硫化物沈殿を生じるものとして代表的なのが$ZnS$です。
すると溶液中には$Cs^+$が残ります。アルカリ金属元素は最後まで残るって覚えても差し支えないです。

以上より解答は、(F)は「1、$^{26}Al^{3+}$」、(G)は「3、$^{65}Zn^{2+}$」、(H)は「4、$^{137}Cs^+$」となります。

金属イオンの沈殿に関する説明は、放射化学の参考書よりも高校の無機化学の参考書の方が図も載っているし分かりやすいです。
私の持っている主任者用の参考書の放射化学のページを見てみましたが、沈殿生成の反応式が列挙されているだけで、とても覚えられるものではありません。
間違っても反応式の羅列を暗記しようなんて思わないでください。
高校の化学の資料集等を捨てずに取っておいているのであれば、引っ張り出して金属イオンの沈殿の分離に関するページを開いてみましょう。
無ければ何かしら高校化学の解説サイトや解説動画を参考にしましょう。

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