選択肢だけを見て解答を導く

上の記事ではエネルギー保存則などから得られた連立方程式を解くことによって、コンプトン散乱光子のエネルギーを求めました。しかし実際の試験中にあの4本の式を丁寧に解いている時間は無いと思います。
そこで今回は回答の選択肢だけを見て解く方法を解説していきます。
コンプトン散乱の式を暗記してるという人も読んでいただければ思います。

コンプトン散乱光子のエネルギーの式に関して、選択肢は以上の通りです。

まずは分母の単位の次元に注目して選択肢を絞っていきます。
分母は\(1+X\)または\(1-X\)という形になっています。
基本的に次元が異なる値の和差計算を行うことはできませので、無次元量である\(1\)と足し引きしている\(X\)は無次元量でなければいけません。

選択肢3と4の場合、
$$X=\pm\left(\frac{1}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)$$
となります。
この場合は分母にある\(mc^2\)がそのまま残ってしまうので、\(X\)の次元は\([E^{-1}]\)となります。※エネルギーの次元を\([E]\)とする。
無次元量である1とは次元が異なるので、和差計算を行うことができず、回答としては適当ではありません。

選択肢1、2、5、6の場合、
$$X=\pm\left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)$$
この場合は\(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\)の部分でエネルギーの次元が打ち消されるので、Xは無次元量となります。

したがって、分母の次元に注目することで選択肢3、4を除外することができます。

次に分子の次元に注目して選択肢を絞っていきます。
求めているのはコンプトン散乱光子のエネルギーですので、全体としての次元は\([E]\)となります。
分母は無次元量ですので、全体の次元が\([E]\)となるためには、分子の次元が\([E]\)でなければいけません。

選択肢1、2は分子が\(1\)であり無次元ですので、回答としては不適当です。
選択肢5、6は分子は入射光子のエネルギー\(E_{\gamma}\)であるので、次元が\([E]\)となります。

よって選択肢1、2は除外されます。

選択肢5、6は単位の次元が同じですので、次元による比較はこれ以上行うことができません。
ここからは数学的な比較を行います。
散乱角の範囲\(0°\leq\theta\leq180°\)より、
$$-1\leq cos\theta\leq1\\-1\leq -cos\theta\leq1\\0\leq 1-cos\theta\leq2$$
よって、下式が成立します。
$$0\leq \left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)$$
この不等式を使って選択肢6の値の範囲を考えてみましょう。
$$-\left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)\leq0\\1-\left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)\leq1$$
散乱光子のエネルギーを正として、下記の範囲で考える。
$$0<1-\left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)\leq1\\1\leq\frac{1}{1-\left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)}\\E_{\gamma}\leq\frac{E_{\gamma}}{1-\left(\frac{E_{\gamma}}{mc^2}\right)\left(1-cos\theta\right)}$$
よって左辺(入射光子のエネルギー)より右辺(散乱光子のエネルギー)が大きくなってしまいます。
したがって、選択肢6は不適であることが分かります。

ここまで細かく値の範囲を考えなくても、選択肢6の分母が1より小さくなりそうだという感覚が持てれば十分です。

以上より答えは選択肢5が正解であることが分かります。

このように、文字式の計算では単位や値の範囲を考えると、明らかにおかしい選択肢が混じっていることがあります。ですので、計算ができなかったとしてもすぐに諦めないでください。また、ゴリゴリ計算していくと時間が足りなくなりそうな問題でも、選択肢を絞って計算量を減らしてみましょう。

今後の過去問解説でもこのテクニックを使える問題があったら解説していきたいと思います。

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