平成29年 物化生 問3-I【放射線取扱主任者】

それでは解説していきます。
壊変系列に関して最低限覚えてほしいのが、各系列の最初の核種と安定核種です。
下にまとめます。

トリウム系列(4n系列):$^{232}Th\rightarrow^{208}Pb$
ネプツニウム系列(4n+1系列):$^{237}Np\rightarrow^{205}Tl$
ウラン系列(4n+2系列):$^{238}U\rightarrow^{206}Pb$
アクチニウム系列(4n+3系列):$^{235}U\rightarrow^{207}Pb$

この4つの壊変系列のうち、ネプツニウム系列は最初の核種($^{237}Np$)の半減期が46億年よりかなり小さく、現在、地球生成時のものは存在していません。
この問題では「地球生成時から現在も存在している天然放射性同位体からなる壊変系列」と限定しているので、ネプツニウム系列を除いた3系列について考えていきます。

$\alpha$壊変では質量数が4小さくなり、$\beta$壊変では質量数が変化しません。
ですので下式が成立します。
$\left(最初の核種の質量数\right)-\left(安定核種の質量数\right)=\left(\alpha 壊変の回数\right)\times 4$

よって$\alpha$壊変が最も多いのは、ネプツニウム系列以外で最も質量数の差が大きいウラン系列です。
念のために上の式に代入して、$\alpha$壊変が8回かどうか検算しましょう。
$238-206=4x\\x=\frac{32}{4}=8回$

同様にして$\alpha$壊変が最も少ないのは、最も質量数の差が小さいトリウム系列です。
上の式に代入してみると、
$232-208=4x\\x=\frac{24}{4}=6回$
よって6回$\alpha$壊変することが分かります。

次に(C)についてなのですが、これは私は覚えていませんでした。
鉛の同位体のうち安定核種は$^{204}Pb$、$^{206}Pb$、$^{207}Pb$、$^{208}Pb$の4つだそうです。
ですので解答は「4、204」となります。
$^{204}Pb$以外の3つは壊変系列の安定核種なので覚えておいたほうが良いですが、$^{204}Pb$はどうなんでしょう。
個人的には余裕があれば覚えておけばいいかなくらいの感覚です。

次は放射能の計算です。
おなじみの下の式を使います。
$A=\lambda N=\frac{ln2}{T}N=\frac{ln2}{T}\frac{w}{M}N_A$
$A\colon放射能\left[Bq\right]\\\lambda\colon壊変定数\left[s^{-1}\right]\\N\colon原子数\\T\colon半減期\left[s\right]\\w\colon質量\left[g\right]\\M\colon質量数\\N_A\colonアボガドロ数$

それでは代入していきます。
$\frac{A_{Th}}{A_U}=\frac{\frac{ln2}{T_{Th}}\frac{M_{Th}}{230}N_A}{\frac{ln2}{T_U}\frac{M_U}{238}N_A}=\frac{238T_UM_{Th}}{230T_{Th}M_U}$
よって(D)の解答は「5、$\frac{238}{230}\cdot\frac{M_{Th}}{M_U}\cdot\frac{T_U}{T_{Th}}$」

永続平衡であるとき放射能は等しくなるから、
$\frac{A_{Th}}{A_U}=1$として計算していきます。
$\frac{238}{230}\cdot\frac{M_{Th}}{M_U}\cdot\frac{T_U}{T_{Th}}=1$
半減期を代入して、
$\frac{238}{230}\cdot\frac{M_{Th}}{M_U}\cdot\frac{4.5\times10^9}{7.5\times10^4}=1\\\frac{238}{230}\cdot\frac{M_{Th}}{M_U}\cdot 6\times10^4=1\\M_U=\frac{238}{230}\cdot6 M_{Th}\times 10^4$
$M_{Th}+M_U=1.0\left[g\right]$より、
$M_{Th}+\frac{238}{230}\cdot6 M_{Th}\times 10^4=1\\M_{Th}=\frac{1}{1+\frac{238}{230}\cdot6\times 10^4}\approx\frac{1}{6}\times10^{-4}=\frac{100}{6}\times10^{-6}\approx16\times10^{-6}\left[g\right]=16\left[\mu g\right]$
(E)は「8、16」です。

問題の解説はここで終わりますが、もしも$\frac{1}{1+\frac{238}{230}\cdot6\times 10^4}$を見たとき、細かく筆算して計算したという人がいましたら、以下の話を読んでいただければと思います。

(E)の選択肢を見て、値を丸める際にどの程度の誤差が許容できるかをザックリと考えていきます。
(私独自の概算なので、ちゃんとしたやり方があるのであればそちらを参考にしてください)

例として隣合う数値の1.2と1.4について考えてみます。
値を丸めたことでこの2つの選択肢を間違えないために、丸める際の誤差はどれくらいに抑えたらいいでしょうか。

相対誤差に近い計算を行います。
$\frac{\left|1.2-1.4\right|}{1.4}=0.142\cdots$
ですので、14%程度の誤差が出るような丸め方をしてしまうと、選択肢を間違えても気づかない可能性があると考えられます。
また、計算結果として1.3くらいの値が出てしまっても1.2と1.4のどちらにすればいいのか分からなくなりそうです。
ですので、1.2と1.4を取り違えないためには、誤差が14%の半分以下に抑えられるように概算したほうが良いかなと考えます。

上記のような考え方で、最も誤差許容度が小さい2つの値が18と20です。
$\frac{\left|18-20\right|}{20}=0.1$
10%の半分が5%ですので、これを頭の片隅において概算をしていきます。

ここで$\frac{1}{1+\frac{238}{230}\cdot6\times 10^4}$を見てみましょう。
まず$1\ll\frac{238}{230}\cdot6\times 10^4$ですので、分母の1を消去できないかなと考えます。
$1$と$\frac{238}{230}\cdot6\times 10^4$では少なくとも$10^4$倍もの差があります。
割合としては0.01%ですので、消去しても問題なさそうだと分かります。

次に$\frac{238}{230}$を消せれば楽だなと思うので、$\frac{238}{230}=1$として計算できないか考えます。
$\frac{\left|238-230\right|}{230}=\frac{8}{230}$
$\frac{2.3}{230}$で1%ですので、だいたい3-4%程度値が変わってくる可能性があります。
5%を超えていませんので、おおよそ正しい値は求まると考えられますが、若干不安ですね。
このような時、私は不等号を使用します。
$\frac{1}{\frac{238}{230}\cdot6\times 10^4}<\frac{1}{6\times 10^4}$
が成立しますので、$\frac{1}{6\times 10^4}$を計算して出てくる値は、解答となる値よりも大きくなることが分かります。
$\frac{1}{6\times 10^4}$を計算すると$16.6\cdots\times10^{-6}$ですので、それよりも小さい値で最も近い値である16が答えになると分かります。

実際の試験中には、上記のようなことを頭の中でおおまかに計算するので、慣れればそんなに時間はかからないです。
筆算を繰り返すことによる時間の消費、計算ミスのリスクに比べたら、概算のために少し時間を費やすのは全然アリかなと思います。

繰り返しになりますが、上記のやり方はあくまでも私独自の方法ですので、ちゃんとしたやり方があるのであればそちらを覚えてください。
あと、厳密に誤差を求める場合は誤差伝搬について考える必要があります。上記の方法が、誤差を求める手法としては結構いい加減であるということは覚えておいてください。

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