H30年物化生1-1その3(第1種放射線取扱主任者)


質量数11の炭素原子核が(A)壊変するとき、放出される(A)線のエネルギーは最大で(エ)MeVである。ただし、親核、娘核、並びに電子の質量を原子質量単位で11.01143u、11.00930u、0.00055uとする。

\(^{11} C \)は\( \beta^+ \)壊変またはEC壊変を起こす核種です。ECは選択肢にありませんので(A)は\( \beta^+ \)です。\(^{11} C \)はPETに使用されることもある核種ですので、\( \beta^+ \)壊変を起こすことは忘れないようにしましょう。
この辺の話はいつかまとめたいと思います。
今回はエネルギー計算の部分をメインで解説します。

まずは結論から。
\( \beta^+ \)線の最大エネルギーは下記のように計算されます。
$$E_{max}=Mc^2-M^{\prime}c^2-2m_ec^2\\=(11.01143-11.00930-2\times 0.00055)\times 931.5\\=0.00103\times 931.5=0.959 \cdots =9.6\times 10^{-1}MeV$$
\(E_{max}\):\( \beta^+ \)線の最大エネルギー
\(M\):親原子核の質量
\(M^{\prime}\):娘原子核の質量
\(m_e\):電子の質量
\(c\):光速度

上式について分かっているという方はブラウザバックしても構いませんが、分からない方は下記の解説をご覧いただければと思います。

まず\( \beta^+ \)を簡単に説明すると、原子核内の陽子が中性子に変わり、陽電子とニュートリノを放出する反応と言うことができます。
$$p \rightarrow n+e^+ +\nu \cdots(式1)$$

しかし、単に陽子が中性子に変わることはあり得ず、\( \beta^+ \)原子核内で陰電子(いわゆる電子のこと)と陽電子の対が生成され、陰電子と陽子が反応して中性子になります。
(なぜあり得ないのかについては、今後機会があれば解説します。)
よって式1は次のように表す方がより正確かも知れません。
$$p + \left( e^- +e^+ \right) \rightarrow n +e^+ +\nu\cdots(式2)$$
\(^{11} C \)の壊変を式1のように表現すると下記のようになります。
$$^{11} C \rightarrow \, ^{11}B +e^+ +\nu$$
上式の壊変前後の静止エネルギーは下記のようになります。
$$\left(壊変前の静止エネルギー\right)=\left(M+6\times m_e\right)c^2\cdots(式3)\\ \left(壊変後の静止エネルギー\right)= \left(M^{\prime}+5\times m_e+m_e\right)c^2\cdots(式4)$$
\(^{11}C\)の質量は原子核の質量\(M\)と電子6個の質量の和になりますね。
同様に\(^{11}B\)の質量も\(M^{\prime}\)と電子5個の質量の和になります。
単純に式3,4の差を取って壊変エネルギーを求めたいところなのですが、\(\beta^+\)壊変の場合は式2のように電子対の生成のためのエネルギーが必要です。そのため、壊変前後の静止エネルギーの差(\(E_1\)とする)のうち、電子対の生成に必要なエネルギー\(2m_e c^2\)を除いたエネルギー(\(E_2\)とする)が、\(\beta^+\)粒子とニュートリノに与えられることになります。
\(E_2\)は下記のように表されます。
$$E_2=E_1-2m_ec^2=\left\{\left(M+6\times m_e\right)-\left(M^{\prime}+5\times m_e+m_e\right) \right\}c^2 -2m_ec^2 \\=Mc^2-M^{\prime}c^2-2m_ec^2\cdots(式5)$$
このエネルギー\(E_2\)がすべて\(\beta^+\)粒子に与えられたとき、\(\beta^+\)線のエネルギーは最大になりますので、今回の問における\(E_2\)を計算していきましょう。

1原子質量単位(1u)当たりの静止エネルギー931.5MeVを利用すると、
$$Mc^2=11.01143\times931.5MeV\\M^{\prime}c^2=11.00930\times931.5MeV\\2m_ec^2=2\times0.00055\times931.5MeV$$
これらを式5に代入すると、本項の冒頭で行ったような計算になります。

解説は以上となります。

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